クライアント中心療法

カウンセリングで私が最も大切にしているのは、クライアント(来談者)から「話していて自分でもふと思ったんですけど…」と ごく控えめに表明される純粋な気づきです。

 

これはカウンセラーから問題点を鋭く指摘されて「そう言われてみると…」と納得させられるのとは違います。また、長年にわたって形成されてきた自分の考え方や行動を、カウンセラーからの助言や提案によって簡単に変えられるほど人間は単純ではありません。

 

どんなときも、あるがままの自分を温かく共感的に理解してもらえる。そんな穏やかで自由な対話の中から生じた純粋な気づきと自己理解こそが、その先の新たな行動へと自分を導いてくれるのです。

 

クライアント中心療法では、この client-centeredness [*1](クライアント中心性)と

To be effective, it must be genuine. [*2]効果的であるためには、本物でなければならない)という姿勢を一貫して保ち続けます。

 

この「本物である」とは、クライアント中心療法の創始者カール・ロジャーズが『セラピーによるパーソナリティ変化の必要にして十分な条件』[*3] で述べた「セラピストはその関係の中で一致しており統合していること」がどれだけ達成されているかということです。 

 

それは、ひと言でいうなら 情熱と真心がそこにあるかどうか だと私は思います。カウンセラーがクライアントに対して受容しているふりや共感しているふりをするのは簡単です。もっともらしい助言や提案をすることも簡単です。でもそれではクライアントの中に本当に純粋な気づきが生じることはほとんどありません。

 

クライアントとの対話の中でカウンセラーの側にほんのわずかでも偽りの気持ちが生じたとき、それにカウンセラー自身がいかに早く気づいて本来の真心のこもった対話に戻せるか。そしてその姿勢を一貫して保ち続けることにどれだけ忠実で厳格でいられるか。それが崩れるとクライアント中心療法の理論はすべて絵空事になってしまいます。

 

クライアント中心療法はカウンセリングの初歩などでは決してありません。確かに面接の過程はゆっくりと穏やかに進んでいくカウンセリングです。でも、カウンセラーにとっては、自分の心や言葉にごまかしはないか、偽りはないか、安易な助言や提案で済まそうとしていないか、そこに全人格を懸ける覚悟をもって臨まなければならない、そのくらい厳しいカウンセリングだと私は思っています。

 

人が、自らのパーソナリティに建設的な変化を起こし、内面的な成長を遂げ、その生き方をより満足のいく人生へと発展させていくとき、そのために必要なものはすべてその人自身の中にある。これがクライアント中心療法の根底をなす人間観であり、クライアント中心療法を実践するカウンセラーの信念でもあるのです。

 

そして、その思想はこのホームページにも反映されていますので、こちらをご覧になって「シンプルだけど なんか良さそう」とお感じになったら クライアント中心療法との相性が良いということかもしれません。


*1,2 文献:Rogers, C. R. (1946). Significant aspects of client-centered therapy. American Psychologist, 1(10), 421.

*3 文献:Rogers, C.R. (1957). The necessary and sufficient conditions of therapeutic personality change. Journal of consulting psychology, 21(2), 95-103.